びゅーてぃふる ❦ ふれぐらんす【気象系BL】
第1章 かりそめの遊艶楼
番頭に振り返ることなく、最上階に向かって走った
階段を上がっている途中、上から下りてきていた部屋子を捕まえて
「奏月の部屋は?」
急かすように問いかけると、驚きながらも
"こちらにございます"とまた上に歩を進めてくれた
「櫻の間でございます」
「え…」
「奏月様いらっしゃいました」
部屋子が頭を下げて去っていく
「…櫻の間って…」
「翔様っ!」
「うおっ!!」
襖が勢いよく開いて、和也が俺に飛び付いてきた
「び、びっくりし」
「お待ちしておりました!見てください!立派なお着物でございましょう?」
俺の前でくるくる回って存分にアピールしてくる
億なんてすぐに、とはいかないけど和也を身請けできるかもしれない
そんな嬉しい気持ちで来たのに…和也に負けたな
表情を緩ませながら着物に目を通す
「…似合ってるよ」
黄色みがかった赤い、緋色の着物
和也の黒い髪によく映えて
太夫である貫禄が少しだけ垣間見える
「とりあえず中に入れてくんないか?太夫様」
「す、すみませんお入りくださ…あ」
端に避ける和也の腰を掴んで、中に一緒に入った
蜩の間と違い
藍姫の松の間くらい広々とした空間
本当に太夫になったんだな
と感じさせる居間に2人、向かい合わせで座った
「おめでとう…で合ってんのかな
太夫昇格、すげぇじゃん」
「そんな、勿体無きお言葉でございます」
「なぁ…源氏名って太夫にしかもらえないんだろ?
かづきって、どう書くんだ?」
和也がこんな感じでした、と床に指を這わす
「奏でる…か…
それに月で、奏月…良い名前だな」
「楼主様がつけてくださいました」
はにかむその頬を片手で撫で、輪郭を滑り顎をくいっと上げる
「翔様…?」
「すごく良い名前だけど…俺は、俺だけは…和也って呼んでもいいか?」
「…え」
「呼びたいんだ…和也…」
柔らかい唇に自分のそれを当てる
「…ダメ…翔様…」
離れようとした俺の首に腕が巻き付いてきて
ぐいっと引き寄せられる
「…っん、ふ…」
その行動に燃えて、半開きの口から舌を差し込んだ
口内を舐め回しながら
震える和也の身体を、自分の身体に寄せる
「…はぁ…和也、和也…抱きたい…」
熱が中心に集まって、和也を愛したいと膨らみ始める
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