君がいるから~Sweet Life~
第8章 f
「…転勤、ですか」
部長からそれを言われたのは、1ヶ月くらい前だった
受ければ出世は確実のコースなのは分かってる
前の俺なら、間違いなく迷うことなく引き受けたと思う
だけど
今の状況はとても充実していて
…壊したくなくて
すぐに返事が出来なかった
それを言われた日、智はすぐに俺がおかしい事に気付いた
俺も、八つ当たりしてしまったり
その後はドライブで気を紛らわしたりしてごまかしてきたけど
もういい加減、返事もしなくちゃいけないし
智に隠すにも限界を感じていた
だって、そうなれば俺は智と離れなければならなくて
まさか仕事を辞めて、一緒に行こうなんて言えるわけがないんだから
ー…どうすればいいんだよ
智に言えば、絶対に反対なんかしないのは目に見えている
同じサラリーマンとして考えれば、それが大きなチャンスだと言うことも分かってるからこそ
"引き受けろ! " って言うはずだ
でも俺は
…はっきり言ってそこまで欲はない