君がいるから~Sweet Life~
第9章 3×e
11月と言えば智の誕生日
…今までの付き合いから、智が記念日はおろか
自分の事すら覚えてないのは充分過ぎる程分かってる
だから、もうすぐ迎える自分の誕生日なんて忘れてるんだろうなと思って
俺は密かに智の誕生日祝いの計画を立て始めたんだ
当日である今朝も
「翔ちゃん、今日は俺が飯作れそう」
いつもと全く変わらない智がそこにいて
たまたま出勤の支度をしながら、夕飯の事を話している
「そう?俺も土曜だし外回りないから定時だよ」
だから俺も、敢えて何も知らないフリをした
ネクタイを締めながら、先に出ようとする智を鏡越しに目で追って
…本気で忘れてんだな
思わず苦笑してしまう
俺からしたら、有り得ない思考回路
だから目が離せない
毎日一緒にいても、その毎日が楽しい
「俺、先に行くねー」
智が玄関から少し大きな声を上げた
「行ってらっしゃい!」
バタン、と閉まるドアを見送って、待つ事3分
よし
俺は締めていたネクタイを外した