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キミまでの距離

第1章 出会い

ぼんやりしてた。

最近忙しかったから疲れてたし。

だから気づかなかったんだ。

目の前のお客さんに普通に対応してたら手を掴まれた。



頭がまわらなくて掴まれた手を見てからお客さんの顔を見たら男の人だし。

お兄さんじゃないね。
おじさん?

「お兄ちゃん。可愛い顔してるね。何時まで?ちょっと付き合ってよ。」



なに言ってるの?この人。
酔ってる?
てか俺、男だよ?

コンビニのレジで。
深夜のこの時間。

さっきまでもう1人のバイトがいたんだけど、ちょっと急用で上がって店長が来るまでの少しの時間だった。

「すみません。離して下さい。」

言ってみたけど聞いちゃいない。

何時まで?って、そればっかり。

何時まで?ってキャバ嬢とかと勘違いしてない?

参ったなー。

今のまま優しく言ってもダメなのかな。
キツめに言うか…と思った時、
他にお客さんはいないと思ってたら奥から男の人が来て、

「やめて下さい。」

おじさんの手を剥がして俺の手を握った。

「なんだよ。お兄ちゃん。」

「こいつ俺の…だから。」

へ?

「お兄ちゃんの?じゃあ仕方ないなー。お兄ちゃんも可愛いね。お兄ちゃん、遊ば、
「遊ばない。」……そうか。じゃあ帰るか。」

おじさんの言葉に被せながら笑ってるようで笑ってない目で、帰れ、とドアへと走らせた。

おじさんは思ったよりあっさり引き下がって拍子抜けした。

「大丈夫?」

優しい笑顔で手を離した。

この男の人。
うん。お兄さんだね。若い。

「ありがとうございました。」

頭を下げると、

「ううん。ごめんね。もっと早く助けたらよかった。」

優しい。可愛い。

キュンとした。
胸がときめいた?
恋しちゃった?

は?

なに言ってんの俺。
ダメダメ。
男だよ。俺。

色々 頭で考えてるうちに、この人はさっきいたらしき雑誌コーナーから雑誌とビールとお弁当を手に戻ってきた。

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