season
第17章 名前なんてないけれど
こないだにのに振られた。
お付き合いとかの“フラれた”じゃない。
食事のお誘いの方。
だからいちいち落ち込んでもしょうがない。
ご飯でも飲みでも。
なんでもいいの。
ちょっと一緒にいたかった。
お腹空いてなかったのか、お酒の気分じゃなかったのか。
…誰かと約束でもしてたのか。
「今日はやめとく。」
「そっか、じゃまた今度。」
簡単に終わったやり取り。
でも実は残念だったりする。
ちょっとだけね。
なんでだろ。
最近のにのって笑ってるんだけど。
嘘っぽい笑顔。
どこか冷めてる声。
気になってたんだ。
憂いを帯びてっていうやつ。
よく見る表情といえば、いつものそれ。
でもそれって俺たちの前でするやつじゃないよね。
演技のお仕事の…でしょーが。
今日だって時折静かに微笑んでたにのが小さく見えた。
遠く感じた。
心のはじっこに引っかかる違和感。
*****
なんとなく…だったその違和感は俺の中で大きくなっていった。
その次のタイミングでも同じように俺の誘いをあっさり断るにの。
ほかの人とはご飯や飲みに行ってると知ってるんだぞ。
おもしろくない!
「なんなんだよ。」
つい漏れた愚痴を聞き逃さなかった松潤に肩を掴まれた。
「付き合いがあるのも、モテるのも、お互い様っていうか。」
「は?」
「いっつも忙しそうじゃん。」
「え?」
「いつも、それもあちこち、相葉くんの親友だの、仲良しアピールしてる同期や後輩をテレビの中でも外でも見てるんだからさ。自分の入り込む余地なんて、って思ったりしてんじゃない。」
「…」
「プライベートの方もお忙しいようだし。そこもお互い様なんじゃないの?」
…言い返す言葉を探してる俺に翔ちゃんがポツリ。
「にのは我慢してるのかなー。大人になったのか?
最近、相葉愛、語らないよね。」
……
「にのが相葉ちゃんのことでムキになったり、ドヤってるの見たい、俺。」
リーダーまで。
なんかみんな色々言ってるうちに納得してる。
俺も。