ラブリー
第1章 いとしいひと
「ちょ…ちょっと!」
体を押し返されて…
いいじゃん、ちょっとくらい。
にのは恥ずかしそうに少しだけ離れて俺を見た。
「もう!心配したじゃん!」
「?」
「携帯は?」
ポケットをゴソゴソして、
「家かも。たぶんカバンの中だ。」
もーー!
「こんな時間になにしてんの!」
「肉まん食べたくなって。」
袋から取り出して半分にして俺に渡すと歩き出した。
「おいしいね。」
うん、おいしいけど。
「ホントに会いに来てくれた。
すっげー嬉しい。」
珍しく素直なにのに面食らう。
「無理しなくてよかったのに、って言うかと思った。」
「ふふふ。そうだね。
言うとこだった。」
寒いし、
さっきまで泣きそうだったし、
心配したし怒った。
でも目の前その笑顔にそんなことどうでもよくなる。
会えたし、にのと外を歩くなんて久しぶりで嬉しい。