ラブリー
第6章 シリウス
「あいつ。言ったんだ。
好きだった、って。」
うわ。
俺、泣きそう。
やばいやばいと視線を上げたら翔ちゃんがティッシュを袋ごと渡してくれた。
「まだ泣いてない。」
「泣きそうだろ?」
そうだけど。
今、堪えてんだから。
「ね、お前は言ったの?」
俺の問いかけに首を振った。
「言えなかった。でもわかったと思う。俺、泣いちったし。抱きついたし。」
「ドラマみたい。」
「映画だな。」
なんだよ、って泣き笑いする彼は聞いてもらってスッキリしたのかケラケラと笑った。
「その時分かり合えた気がした。言えなかったな、好きだったよ、って。肩を叩き合ってまさに友情のそれだったよ。
ちょっと甘いムードでもあれば最後にキスくらいするんだったな。」
あはは、と笑った彼の肩を俺も掴んでいいのかな。
翔ちゃんと目が合ってどちらからともなく彼の肩を撫でた。
それから彼を抱えて翔ちゃんと二人でタクシーを拾い送り届けた。
二人になった車内、翔ちゃんがなにか言いたそうに俺の顔を見たから、ん?、って視線を合わせたけどニコと微笑んで。
「なんでもない。」
そう言うと窓の外に視線を向けた。
俺はまたにののことを考えてて。
もう家?
もう寝た?
…そんなことを。