ラブリー
第6章 シリウス
俺はなんて言ったっけ?
つい1時間前のことを思い出そうとしていた。
その時は確かに一緒にいたのに今はひとり。
ひどいことを言ってしまったかも。
傷つけたかな。
あいつの背中だけ思い浮かぶ。
少し肩を落としたその後ろ姿。
それが遠ざかって部屋からいなくなるのを黙って眺めていた。
俺を好きだと言った。
ちょっと驚いたけど黙ってしまった相葉くんに、俺も好きだよ、と言った。
一度、ふふ、と笑ってからまた同じことを言う。
同じようでいて違うのか…
…
ずっと好きだった
真剣な声でそう告げる。
さすがの俺も気づいた。
こいつの言う好きの意味。
頭の中で言葉を探すけど見つからない。
ただ突っ立ったまま。
「…ごめ、おれ、」
頼りない声で必死に言葉を繋げるこの人がかわいそうになってきて。
えっと…かわいそうって言ったらダメなのか?
謝らないでよ。
慌てた俺。
「なに言ってんだよー。」
「…」
「ま、その、あれだ、」
しどろもどろもいいところ。
そんな俺を相葉くんの方こそかわいそうに思ったのか。
「ごめん、帰る。」
久しぶりにこんな沈んだこの人の声を聞いて玄関へと歩みを進めるのを見つめた。
止めたいのに止めれなかった。