ラブリー
第6章 シリウス
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仕事帰りに翔ちゃんにさらわれる形で飲みに連れて来られた。
翔ちゃん行きつけのここはまさに隠れ家な飲み屋さん。
個室の。
1杯目のビールもまだ半分あるのに本題に触れてきた時は心臓が止まるかと思った。
「ごめん、相葉くん。
込み入ったことを聞くよ?
にのに言った?」
ゲホッ
気管に入ったってば。
なにこの人。
俺の心の中を見れんのか?
熱くなる頬にビールのグラスを当てて、口はパクパクなっていた俺。
「俺には言ってよ。口は堅いから。」
翔ちゃんはこんなのに首突っ込んでこない人だと思ってたから、まずそこは驚いた。
「相葉くんの味方だから。
ま、にのの味方でもあるけど。」
だから。
さっきからすごいと思ってるんだけど。
にの、って。
なんでそこハッキリ名指し?
そんでなんで断定!
まだ口をつぐんだままの俺にキラキラしてた目を伏せた。
「ごめん。
デリカシーなさすぎた。
踏み込まれたくないよな。」
あーあ、豆腐ぐちゃぐちゃにすんなよ。
箸で突きまくってるのを見ながら口を開くことにする。
別に翔ちゃんが悲しそうだったからでもなくて、勢いに押されたわけでもない。
俺の行き場のない想いを聞いてもらうのもいいと思ったから。