ラブリー
第1章 いとしいひと
だって、知ってたから。
にののことは。
にのはひとりでいたい時があって。
にのだって付き合いがあって。
…いや、待てよ。
違う。
何度も言ってたのを思い出した。
今日、一緒に帰ろ
明日、うちに来る?
それを何度も、ごめん、って断ってたのを。
この前や今日みたいな大事な会や仕事の延長でなく。
いつでも会える人との飲み会。
俺はいつの間にか、いつでも会える“にの”を後回しにしてたんだ。
自分のエゴ、傲慢さにヘドが出る。
我慢してたのかな。
寂しかったのに言わなかったのかな。
“にのは寂しいとか辛いとか言わないから、俺が気づいてやらないと”
そんなこと言ってたのはどこのどいつだよ。