ラブリー
第1章 いとしいひと
「いいじゃん。まだ誰も来ないって。」
ちゅっ。
またキスすると真っ赤な顔でにのも、ちゅっ、って返してくれた。
「もう来るってば。」
キョロキョロ目を動かして気が気じゃないのか落ち着きなくジタバタしてるから、わざとぎゅーぎゅーきつく抱きしめた。
楽屋のドアの向こうの気配に神経を尖らせて最後にもう一度、にのの口を舐めるように味わって解放してあげた。
「火がついた身体。
どうしてくれんのさ。」
恨めしげに俺を見ながら荷物を纏め始めるにの。
「ごめん、ごめん。
今度嫌って言うほど可愛がってあげるから。」
「ばーか。」
もう俺を見るのも恥ずかしいんだろう、お決まりの耳を赤く染めて黙々と手を動かしてる。
「じゃあ行ってくるね。」
「浮気すんなよ?」
「お前もな。」
にののほっぺをぷにっと摘むように触って名残惜しくも楽屋のドアを開けた。