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ラブリー

第2章 sly


「俺は食べてきたってば。」

「わかってるよ。」

クスと笑って餃子も同じように差し向けると条件反射なのか口を開けるから放り込む。

「だから!」

「お前が口を開けるからだろ。」

もお、って笑うこの人を見ながら俺が食べるのを嬉しそうに見てた相葉くんは、冷蔵庫からお茶を取り出してコップに注いで俺の前にコトリと置いてくれた。

おいしかった、と容器を片付ける。

「ごちそうさま。ありがと。」

「どーいたしまして。」

お風呂沸かそう。


……


トン。

浴室に向けた足を止めた。


なんで…


立ち上がった時に相葉くんの手がバッグを掴みイスを引いたのが見えたからだ。

振り向かないでいると背中に声が。

「じゃ、また来るね。
早く寝るんだよ?」

マジで?

一生懸命、普通を装って訊く。

「も…もう帰るの?」

ダメだ。

ちょっと震えたよ、声。

「うん。明日早いからね。」

「そ。」

今のは震えてなかったよな?

そのまま浴室に向いてる俺に向かって投げかける相葉くんの今日最後の言葉。

「じゃあね、にの。」

「バイバイ。」

顔を見ようと振り返ると相葉くんが玄関で靴を履こうとしてるのが見えた。

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