こうするしかなかったんだ
第4章 初めてのお泊まり
モヤモヤした感情の正体がよく分からずにいるうちに家に到着した。
姫葵は緊張した面持ちで身なりを整えていた。
門扉を開けて葉月が促しても姫葵はなかなか来ない。
「姫葵?」
「うん、本当に緊張しちゃって…」
葉月は姫葵の手をとって玄関に連れてきた。
葉月はいつものようにただいまと言って家に入ると、奥からパタパタと足音をさせてお母さんが来た。
「姫葵ちゃん!いらっしゃい〜!あら、本当にかわいいわぁ♡」
玄関先でキャーキャー言ってるお母さんに苦笑してしまう。
「あ、あの松田姫葵です。いつもお弁当美味しくいただいてます。本当にありがとうございます。」
丁寧に頭をさげる姫葵。そんな姫葵を玄関先で抱きしめるお母さん。
「お母さん、ここ玄関だし。なんか焦げ臭いけど」
「やだ!お鍋!」
バタバタとキッチンへ帰っていきながら、どうぞ上がってと叫ぶお母さんに姫葵の緊張も少しだけど和らいだ。