こうするしかなかったんだ
第4章 初めてのお泊まり
「ご飯できたわよ〜!」
お母さんの声で葉月と姫葵は我に返った。
急いで片付けをして1階に下りると、こんなに食べれるの?ってぐらいのご馳走が所狭しと並べられていた。
「お母さん…作り過ぎじゃない?」
「だって姫葵ちゃん、何が好きなのかわからなくって、考えてたら色々少しずつ作ろうかなって…」
「全然少しずつじゃないじゃん」
「でも全部おいしそう♡」
姫葵のとても喜んだ様子にお母さんも嬉しそうだったから、これ以上の文句はやめた。
「さぁ座って〜!食べましょう!」
みんな椅子に着席した。
「いただく前に、葉月ママ。いつもお弁当ありがとうございます。あの…これお礼です」
恥ずかしいのか半ば押し付けるようにお母さんに包みを渡す。
お母さんは黙って包みを開け、そしてハンカチを大事に抱きしめた。
「姫葵ちゃん、ありがとう。おばさん本当に嬉しいわ。それにこのハンカチすごく気に入っちゃった!大事に使わせてもらうわね」
姫葵はホッとしたのか、照れたような笑顔になった。
「さぁ冷めちゃうから食べて食べて!」
みんなでいただきますをする。
姫葵はどれを食べても美味しいってニコニコしていて、それが葉月にも嬉しかった。
「姫葵苦しいんじゃないの?無理しなくて良いからね」
「うん、でも美味しいし…」
「残ったらまた明日の朝食べれば良いから大丈夫よ。ごめんね、おばさん張り切り過ぎちゃった。姫葵ちゃん無理しないで」
お母さんの言葉にやっと箸を置く姫葵。
「あ〜!こんなにお腹いっぱい食べたの久しぶり!幸せすぎる!」
「久しぶりなの?」
お母さんが心配そうに姫葵に聞くと姫葵はしまったって顔をした。
「ダイエット…ダイエットしてるんでお腹いっぱい食べるの控えてたんです」
そんなんじゃないってことは分かったけど、聞いて欲しくない雰囲気だったから誰も聞けなかった。
「お茶淹れるわね」
お母さんが席を立つと、葉月と姫葵は食器を片付ける。そんなの良いのにっていつもなら言いそうなとこだけど、お母さんは黙って受け入れていた。