テキストサイズ

こうするしかなかったんだ

第6章 盲目




姫葵は自分でも驚くほどの大きな声で葉月を呼ぶ。そしてそれはちゃんと葉月に届く。

姫葵?姫葵が私を探してくれてるの…?

あれほど距離を置いてしまったのに。

不安なのか分からない気持ちが渦を巻いて、言葉にできない分涙になる。

「葉月!」

近くで姫葵の声がした。そして、姫葵に抱きしめられた。

抱きしめられながら先輩がいるのに気付いた葉月。
そっと姫葵と離れ、先輩の近くへ向かい頭を下げた。

「先輩…すみませんでした…」

言葉が返ってこないから下げた頭を元に戻す事ができないし、怖くて顔を見ることもできない。

壱聖も声を出そうにも喉がカラカラだったし、怒りと安堵とで何を口にして良いか分からない。でも何かで震える葉月に怒る気にはなれなかった。

「怪我はない?」

「大丈夫です…本当にすみませんでした…」

「よし、戻ろうか。みんな待ってる」

そう言って壱聖は葉月に背を向けた。

許してはくれなかった。

それだけは葉月にもわかった。





ストーリーメニュー

TOPTOPへ