こうするしかなかったんだ
第7章 夏のはじまり
「人も多いしはぐれたらいけないから」
そう言って葉月の手を握ってくれる壱聖の耳が赤くなっていた。
何度もお祭りなんて来たことあったはずなのに、今日は全てが新しくて楽しくて。時間が止まれば良いのにって思った。あまりに幸せな時間を過ごしているのに、もう帰りのことを考えてしまう。
まだ壱聖と話すと緊張してしまうし、葉月から話題を振ることの方が断然少ないから、壱聖はつまらないんじゃないかとか、悪いことばかり考えてしまう。
”先輩はどんな女の子が好きですか?”
なんて聞きたいけど聞けない。
「葉月ちゃん、あのさちょっと話そうか」
そう言って空いていたベンチに促された。