こうするしかなかったんだ
第8章 突撃
ドキドキしながら電車に乗って、駅から壱聖の家へ向かう。
家を出た時は高揚感がありワクワクしていたが、ここまで来て我にかえる。
やっぱり帰ろう…でも会いたい。
どうしたら良いか分からず立ち尽くしてしまう。
鞄の中の携帯が着信を知らせる。着信音で壱聖と分かると、慌てて通話ボタンを押す。
「も、もしもし!」
受話器越しにクスクス笑う壱聖の声が聞こえる。
「おはよ、葉月ちゃん」
「おはようございます」
挨拶しながらその場で頭を下げるとまた笑う声が聞こえる。
「会いに来てくれたの?」
何で分かったんだろうと思い、辺りを見回すけど誰もいない気がする。
「先輩…ごめんなさい…」
「なんで謝るの。すごい嬉しいよ」
「先輩頑張ってるのに邪魔したらいけないなって思って…それなのに会いたくて衝動的に来てしまって…」
だんだんと涙声になってしまう葉月。
「会いたかった?」
「はい」
「俺も」
電話が切れると誰かに手をとられる。
「葉月ちゃん」
葉月は壱聖の胸に飛び込んでしまう。そんな葉月を受け入れて頭をポンポンしてくれる壱聖。でもずっとそんな事はしていられない。
「葉月ちゃん、場所移動しよっか」
黙って頷いて先輩の後ろを歩いた。