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レット・ミー・ダウン【ARS・NL】

第4章 モーニングセット【翔】

私は、帰省の荷物を片付けた。

喪服をハンガーにかけて、洗濯物を洗濯機に投げ入れた。

洗濯物を洗濯機に投げ入れながら、なぜか涙がこぼれてきた。

観葉植物の陰の窓際の席。

丸顔にキリッとした眉。

ふんわりとまとうシトラスの香り。

まくり上げた袖からのぞく、腕の筋肉。

塩コショウを振って食べる目玉焼き。

半熟の黄身はパンにつけてかじる。

時おり、ふっくらとした唇に指をあててもの思いにふける。

かと思えば、サラダをムシャムシャと口にかきこむ。

食べ終わると、誰も見ていないのにきちんと手を合わせる。

私だけが知っている、彼の朝のひととき。

私だけが知っているはずだった、彼の朝のひととき。

声をかけないことで保たれていた時間。

ひっそりと見つめていた。

見つめているだけでよかったのに。

もう、それもかなわないのか。

彼は、もう店には来ないかも知れない…。

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