テキストサイズ

レット・ミー・ダウン【ARS・NL】

第7章 ビスケット【雅紀】

私は腕時計を見た。

◯「いけない、こんな時間!」

私は自転車にまたがると、学童保育所目指して全速力でこぎだした。

何とか時間に間に合って息子のコータのお迎えをすると、そのままスーパーに寄った。

コータ「おかーさん、今日のばんごはん、なに?」

◯「麻婆豆腐。」

コータ「えー、まーぼーどーふ、このまえしたじゃない。」

◯「いいの、とにかく今日は麻婆豆腐。」

家に着くと、娘のサエがテレビの前でゴロゴロしていた。

◯「ただいまー。サエ、テレビ見てる時間あるなら、洗濯物取り込んでおいてよ。」

サエ「やだー、めんどい。」

◯「春休みで一日中家にいるんだから、ちょっとは手伝ってよ!」

サエは、私の言うことなんか右から左で、スマホを取り出すと友達とメッセージのやりとりを始めた。

私は、スーパーで買ったものを冷蔵庫にしまうと、ベランダに出て洗濯物を取り込んだ。

洗濯物を取り込んで室内に戻ると、サエが私の顔も見ずに話しかけてきた。

サエ「お母さん、晩ご飯なに?」

◯「麻婆豆腐。」

サエ「マジ!? この前したばっかじゃん!」

◯「文句言うなら、食べなくてよろしい!」

コータ「おかーさん、がくどうのお手紙、書いてくれた?」

◯「あっ、いけない! 新年度の書類よね、忘れてた!」

家に帰っても座る暇もなく、めまぐるしく私は動いていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ