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レット・ミー・ダウン【ARS・NL】

第9章 コッペパン【和也】

二週間後の週末、駅前のディスコで社内レクが行われた。

大音量の音楽にミラーボールの照明。

バブル世代のオジさん社員は皆ノリノリで踊っていた。

サキもなんだかんだ言って、楽しそうに踊っている。

私はディスコなんてもちろん、クラブにも行ったことがない。

身の置き場がなくて、ドリンク片手にウロウロしていた。

空いているソファを見つけて座ろうとしたら、隣に座っていたのは二宮さんだった。

大音量の音と光の中で、イヤホンをはめてゲームをしている。

この人、本当にゲームばっかりしているんだな。

せっかくのレクなのに、少しくらい楽しめばいいのに。

◯「あの。」

二宮さんは、私に気づいてイヤホンを外した。

◯「踊らないんですか?」

大音量の音楽で、隣の私の声も聞こえないらしく、二宮さんはぐっと顔を近づけて来た。

二宮さんの肌は、白くてキメが細かくて、白雪姫みたいだった。

そして、ふんわりとダージリンとシトラスの香りがした。

◯「踊・ら・な・い・ん・で・す・か!?」

私は二宮さんの耳もとで大きな声で叫んだ。

二宮さんは、しばらく私の顔を見ていたかと思うと、ゲーム機をテーブルに置いた。

そして、スッと立ち上がったかと思うと、フロアへと降りて行った。

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