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レット・ミー・ダウン【ARS・NL】

第11章 サイコロ

〈4〉

オフィスに出社して、同僚とあいさつを交わす。

「昨日、遅かったんだろ? 会議資料できてる? できてないなら手伝うから言って?」

腕まくりした白いワイシャツから、たくましい腕をのぞかせた先輩社員が声をかけてくれた。

その言葉に感謝しつつ、会議資料はできている旨を伝えると、先輩社員は私の肩をポンと叩いてデスクに戻って行った。



〈5〉

少し残業してから立ち寄ったのは、裏通りにぽつんと建つマジックバー。

ツタの葉のからまった小さな建物の、重い木のドアを開けた。

ワインを飲みながら、マスターの見事なカードマジックに酔いしれる。

次はサイコロとカードを使ったマジック。

私が渡されたサイコロを振ると、出た目と同じ数字のカードが空のはずのボックスからあらわれる。

「マスター、これどんなトリック?」

私は驚きのあまり、不粋なことを口にした。

マスターはちょっと顔を曇らせたかと思うと、今度は打って変わってにっこりと微笑んだ。

「トリックなんてありませんヨ? そのサイコロ、よければアナタに差し上げますヨ。」

マスターは、私にそのサイコロを握らせた。

なんの変哲もなさそうなそのサイコロは、数字は1から6ではなく、0から5まで。

私は、そのサイコロをポケットにしまって店を出た。

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