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レット・ミー・ダウン【ARS・NL】

第11章 サイコロ

痛い足を引きずりながら駅務室からホームへと歩いていると、後ろから声をかけられた。

振り向くと、ワイシャツを腕まくりした先輩。

「お前、どうしたんだ。その足。」

ことの次第を説明すると、先輩は眉をひそめた。

「酒入ってて、しかもその足じゃ電車は無理だろ。来い。」

先輩は私を引っ張ってきびすを返し改札を出ると、タクシーを捕まえて私を押し込め自分も乗り込んだ。

「すみません…。」

平謝りする私に怒り気味だった先輩はだんだんあきれ顔になり、苦笑いした。

「いいよ、お前とは帰る方向が一緒だし。それに、残業続きで俺も疲れてたし、ちょうどいいよ。」

先輩からは、シトラスの香りに混じって、少し汗のにおいがした。それがやけに生々しく男を感じてドキドキした。

タクシーが私のマンションの前に着くと、先輩は私を下ろした。

「あんま飲みすぎんなよ。」

先輩は笑って手を振ると、そのままタクシーで行ってしまった。

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