レット・ミー・ダウン【ARS・NL】
第11章 サイコロ
マンションのエントランスでオートロックを解除しようと鍵を取り出した。
その時、サイコロが転げ落ちた。
数字は「1」。
「あれぇ、メロンパンのお客さん?」
声のする方を振り向くと、古びたママチャリに乗った、ベーカリーの店主。
「あ、パン屋さん。仕事帰りですか? 遅くまで大変ですね。」
「新作の試作しててね。夢中になってたら、もうこんな時間。」
店主はえへへと笑って見せた。
「これよかったら食べてみて。考案中の、パイナップル味のメロンパン。」
店主は紙袋を私に渡した。
「感想聞かせてねぇ。」
店主はそう言うと、ギョサンの足でママチャリのペダルをキコキコこぎながら立ち去って行った。
私は部屋に入ると、ソファに沈み込んだ。
「今日はいろいろあったな…。」
駅で転んで、あの駅員さんに助けてもらったり。
ちょうど通りかかった先輩にタクシーで送ってもらったり。
パン屋さんに偶然会って、新作パンもらったり。
「なんか、不思議。マジックみたい。」
ひとりつぶやいて、ハッとした。
彼らに会う前、必ずサイコロが振られていた。
その時、サイコロが転げ落ちた。
数字は「1」。
「あれぇ、メロンパンのお客さん?」
声のする方を振り向くと、古びたママチャリに乗った、ベーカリーの店主。
「あ、パン屋さん。仕事帰りですか? 遅くまで大変ですね。」
「新作の試作しててね。夢中になってたら、もうこんな時間。」
店主はえへへと笑って見せた。
「これよかったら食べてみて。考案中の、パイナップル味のメロンパン。」
店主は紙袋を私に渡した。
「感想聞かせてねぇ。」
店主はそう言うと、ギョサンの足でママチャリのペダルをキコキコこぎながら立ち去って行った。
私は部屋に入ると、ソファに沈み込んだ。
「今日はいろいろあったな…。」
駅で転んで、あの駅員さんに助けてもらったり。
ちょうど通りかかった先輩にタクシーで送ってもらったり。
パン屋さんに偶然会って、新作パンもらったり。
「なんか、不思議。マジックみたい。」
ひとりつぶやいて、ハッとした。
彼らに会う前、必ずサイコロが振られていた。