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レット・ミー・ダウン【ARS・NL】

第11章 サイコロ

後ろに人影を感じて振り向くと、先輩が立っていた。

「最近、なんかあった?」

先輩は私に質問した。

「いえ、なにも…。」

私の返事は、自分でも歯切れの悪いものだった。

「最近、なんか雰囲気変わったっていうか…。」

「いえ、別に何もありません…。」

コーヒーの香りが給湯室いっぱいに広がっている。

「なんか最近、見てて心配っていうか、不安っていうか…。 ふわふわ危なっかしい感じがしてさ…。」

「先輩…。」

「出張の時も、飲みすぎたり…。男と二人なのに、無防備すぎんだろ。」

「すみません…。」

私は赤面した。

確かに、サイコロを手に入れて浮かれていた。

露骨にがつがつしていたと思うと、恥ずかしくなった。

「あんま、心配させんな。俺の辛抱も限界がある。」

先輩は、そう言って私を抱きしめた。

シトラスと汗の匂いがした。

「先輩…。」

先輩は、私を離すと踵を返してオフィスに戻って行った。

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