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レット・ミー・ダウン【ARS・NL】

第11章 サイコロ

私は、力が抜けて壁にもたれかかった。

そして、ポケットからサイコロを出した。

「本当に、すごいよ。このサイコロ…。」

マジックバーのマスターの顔が思い浮かんだ。

そういえば、5の目がまだ出ていない。

私は残業帰りに、マジックバーに寄ってみた。

遅い時間だったせいか、店内に客はおらず、マスターひとりだった。

「イラッシャイ。なんだかうまくいってるみたいですネ。」

私はカウンター席に腰掛けると、ワインを注文した。

「ねぇ、このサイコロの力って? どうしても5が…、出ない目があるんだけど…。」

マスターは、一瞬眉をひそめたが、すぐに笑顔に戻ってワインを出した。

「そうなんデスか? それより今日はどんなマジックをお見せしましょう。カード? それとも…。」

「マスター!」

私は、ワインを差し出したマスターの手を握った。

私が狙っている男性は、残るはマスターだけだ。

カードを操る姿は色気に満ちて、ずっと前から憧れていた。

「手を放してクダサイ。」

「このサイコロくれたってことは、私のこと嫌いじゃないんでしょ?」

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