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レット・ミー・ダウン【ARS・NL】

第11章 サイコロ

人がまばらな改札を抜けホームに降りたら、駅員さんがいた。

私に気がつくと、朝帰りの私に驚いた顔をしたが、笑って手を振ってくれた。

私も手を振り返し、スマホを取り出そうとしたら、一緒にサイコロが落ちた。

出た目は0。

ホームに始発電車が入って来たかと思うと、けたたましい警笛を鳴らして電車が急ブレーキをかけた。

大きな衝突音がした。

ホームは騒然とし、電車の方を見てみると線路の上に駅員さんが倒れていた。

線路の向こう側には、年老いた男性がうずくまっていた。

ホームに転落した男性を助けるため、駅員さんが線路に降り、男性を突き飛ばしたという。

駅員さんは逃げ遅れたのだ…。

駆けつけた救急隊の人に、一緒に病院まで付き添うと申し出た。

「失礼ですが、どういったご関係ですか?」

「あ、あの、友人です。」

しかし、他の駅員に救急車への同乗は断られた。

「ご友人は、彼の家族からの連絡をお待ちください。」

行き先の病院も聞かされず、私はホームに残された。

私は頭が空っぽになり、どうやって自宅まで帰って来たか覚えてない。

シャワーでマジックバーのマスターとのめくるめく快楽の跡を流し、バスルームを出るとテレビをつけた。

ニュースでは、先ほどの電車の事故を報じていた。

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