Everything
第9章 かわいいひと〜懐く〜
「いた!」
ニッと笑って、あいつがドアから半分、顔を覗かす。
職員室には余りいない俺の居場所をわかってて。
相葉は時々やって来る。
教科別の準備室。
地理や歴史の資料が雑多に詰め込まれた棚のあるこの部屋。
サラサラの茶色い髪の毛と目のあたりだけ出して、この中の確認をしてる。
「いません。」
視線を手元に戻してわざと感情を無くした声を出す。
「いるじゃん。」
「お前なー。
よくもまあ飽きもせずにチョロチョロ来るなぁ。」
「くふ。入っていー?」
「なんだよ。いつも聞きもせず入ってくるくせに。」
“せんせー!”
ってドタバタやって来たり、こうやって覗いてお伺いを立てたり。
なんだかんだいっても可愛いくて仕方ない。