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第22章 かわいいひと〜その日〜
体育館での卒業式は滞りなく行われてほぼ定時に終わった。
母ちゃんは俺の姿を見た途端、涙を零して入場したばかりなのに俺はつられて泣いてしまった。
追い討ちをかけるように拍手をしながら微笑む大ちゃんと目が合って…
トドメに二宮先生と目が合って、うん、って控えめに頷く仕草にどんどん涙が溢れる。
式なんて退屈でつまらないと思ってたのに先生や在校生代表、卒業生代表の言葉が胸にしみる。
そうだよ。
卒業したら進学する人も多いけど就職する人だっている。
社会に出るってことだ。
未成年でも仕事を始めたら社会人。
そんな当たり前のことを実感して、期待と不安の後者の方が大きくなる。
大丈夫。
俺には母ちゃんも先生や櫻井、大ちゃんだっている。
なにかあった時に頼れる大人が身近にいるんだ、って自分に言い聞かせて余計な不安を払い落とした。