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第31章 かわいいひと〜知らない世界〜



家にいたくなくて鍵と携帯だけ持って外へ出た。

行くあてもなく夜の街をとぼとぼと歩く。

しばらく歩いてから大野さんに電話をかけると、さほどコールせずに出たからホッとした。

耳に大野さんの声が届いて意味もなく泣きたくなる。

「にの?どうした?」

「…大野さん。
今なにしてんの?」

「絵、描いてたけどもう今日は終わり。
飲んでるよ。」

「そっか。」

携帯から外の音が聞こえたんだろう。

「外?
俺んち来れば?」

「いい?」

「いいよ。」

優しい声にも、なにも聞かないで家に来いと言ってくれるこの人にも泣けてきて。

少しお酒でも買って行こうとコンビニを探しながら大野さんちに向かう。

大野さんちの近くで見つけたお店に入ろうとして立ち止まる。


あ、俺、財布持って来てない。


はあ。
しょうがない。

大野さんには手ぶらでごめんと、言えばいい。

大野さんちにビールがありますように…そんなことを思いながらあと少しの道のりを急いだ。

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