快楽教師
第4章 試着室で…
「……お客様ー??」
カーテンの向こうで、従業員の人が声をかけてきた。
「!!」
まずい!!
此所には男の睦がいる。
あわてて試着していた青いワンピースを睦に掛ける。
「は!!はーい?」
カーテンを少し開けて、顔を覗かせた。
「どうかなさいましたか?」
「いえ、……お腹が痛かったんです」
「まあ、大丈夫ですか?」
「ええ、もう治まりましたから…すぐ出ます」
ははは、と笑いながら百合子は誤魔化した。
従業員が離れていくと、ほっと息をつく。
…あ、
危なかった…。
ワンピースにくるまった睦が顔を出す。
「俺はバレても良かったけどな~」
なんて馬鹿な事をいいながら試着室から出る。
百合子も後を付いて出る。
会計をすませて睦のもとへ歩いていく。
結局、どちらも気に入ってしまったので両方購入した。
「…あ、母さんから電話入ってるよ」
フードコートで待ってるって、と画面をみせながら苦笑いしながら言う。
「じゃあ行こう」
そう言うと、百合子の手を睦が握ってきた。
そんなこと今まで無かったから、ちょっとびっくりする。
「もう俺、弟じゃないでしょ?」
隣で笑う顔は、いつもの無邪気な弟の顔じゃなく、男の顔だ。
"もう弟じゃない"って…
…もしかして私、とんでもないことしてしまったんじゃないだろうか?
しかし、今さらそんな事思っても、後の祭りである。