快楽教師
第5章 遅刻
私は今、職場に電話を掛けている。
「香坂ですけれども…すみません!今日ちょっと、遅刻します」
「おや、香坂先生が?珍しい」
電話口に出たのは、今年60になる、茅原先生だった。
「はい。本当に申し訳ありません…」
携帯を片手に項垂れる私。茅原先生は電話の向こうで笑っている。
「いえいえ。気をつけていらっしゃってください」
「ありがとうございます」
優しい声で対応してくれて、紳士的な茅原先生は、私の理想の教師像そのものだ。
私の前には、いつも以上に長蛇の列が出来ている。
昨夜豪雨に見舞われたため、早起きしようと思っていたのだけど…。
朝弱い私には無理だった。
寝坊した上に、この渋滞。