快楽教師
第5章 遅刻
「っ…と」
手が届くように足を大きく開き、バランスを安定させる。ひどく滑稽な格好だと思うが、形振りなど構ってられない。
視線を少し上げれば、香坂先生の顔がより近くに見える。
喉元にしっとりと汗が浮かんでいる。
こんなに近くに来ているというのに、俺に気付かないのは、痛みに耐えているからに違いない。
「!」
やっと東妻の手を掴むことが出来た。
東妻は予想だにしない事に驚いているようだ。
俺と目があったので、思い切り睨んでやる。
このやろう、お前は何をしているんだ?見損なったぞ…
テレパシーなんて使えないが、軽蔑を含んだ視線を投げつけた。
しかし東妻は直ぐに何時もの人懐こい笑みを俺に向けてきた。