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異彩ノ雫

第36章  十ノ月 ③




誰が置き忘れたものか
ベンチに色褪せた本一冊
傾きかけた
秋の陽を受けてひそやかに…

通りすがりに
そっと頁を開いてみれば
想い込め
美しく紡がれた物語

そのまま はらはらと数頁…

私は声を持たぬ身ながら
その想いに心を添わせ
一節を高らかに読み上げてみたい

大切な人へと贈る
愛の調べにもなるものを

語る術なき
風の我が身がやるせない…







【秋風】



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