
異彩ノ雫
第63章 intermezzo 白亜慕情
湖のほとりに佇む館は
小さきものが守る城
朝焼けに煌めく湖面に向かい
大きな窓を開け放てば
清かな風が
レースのカーテンをそよがせる
陽が高みにかかる頃
焼きたてのマフィンに
紅茶を添えて庭へ運べば
豊かな香りが宙を漂う
鳥の囀ずり
花の彩り
繰り返される
穏やかな時のいとなみ…
けれど
日暮れて上る月影が
水面でゆらめくしじまの中を
小さきものの 嗚咽が流れる
── …すぐにもどるわ
いつの日か
帰り来る主のぬくもりを
心に探すばかりの夜
泣き濡れて
小さきものは夢路をたどる
窓辺にともした灯りひとつ…
絶えることなく
湖畔の夜に想いを映す
(了)
