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異彩ノ雫

第79章  三ノ月 ③




風が
恋した相手は菫草
折々に吹き寄せ肩を揺する

── わたしの気持ちは
おわかりでしょう…?

返らぬ想いの切なさは
時に
ため息めいたそよ風となり
空をさ迷う

── お気持ち嬉しく思います
けれど…

彼女がそっと見つめる先には
花から花への白い蝶
優雅な彼への片恋は
やるせなく胸を震わせる

春風と菫と白い蝶…

とりどりの想いが織り上げる
物憂く儚いぬくもりこそが
春の幻 春の夢…







【春】


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