ただあなただけを見つめる
第24章 生きること
診察室から出ると、旭さんが座って待っていた。
「夏帆、どうだった?」
「……赤ちゃんできてた。」
「マジか!」
旭さんが「よかったな」と笑う。
笑顔の旭さんとは裏腹、私は浮かない顔をしていた。
「……おろそうかな。」
気づけばそんなことまで呟いていた。
旭さんはびっくりしてこっちを見る。
「は?何で?産むんだろ?」
「産みたいけど不安で…」
やっぱり暁がいないのが不安だ。
私一人で育てられる自信がない…。
「情けねぇな。大丈夫だよ。
暁の代わりにはなれねぇけど、金とかは俺が何とかする。
暁が出てきたら返してもらえばそれでいいんだし。」
「でも……」
「大丈夫大丈夫。
暁、絶対喜ぶよ。」