ただあなただけを見つめる
第20章 消毒液
「ありがとうございました」
「お大事に。」
看護師さんにお辞儀をして扉を開ける。
すぐに処置してもらったため、何とか妊娠は大丈夫みたいで、二人ともホッと胸を撫で下ろした。
「よかったな。」
「暁…ごめんなさい……」
「夏帆は悪くねぇよ。」
涙で濡れた頬を温かい手で触れられる。
この手にいつも安心するの。
「もう帰ろ。疲れたろ?」
「うん…」
暁に手を引かれ、すっかり薄暗くなった道を歩いた。
薄暗い道は平気だった。
でも、今は暁がいないと歩けないよ…。
私、弱いね。