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問題児とオタク少女

第9章 気持ちの準備

「え!ちょっと!どうしたの?!」

ほら。

見られた。

さっちゃんは相変わらずオロオロしてて、困ってるのが見え見えだ。

「ごめん。目がホコリに入った…」

「それ言うなら、目にホコリが入っただよ…?」

次は、こいつ大丈夫か的な目線で見られている…気がする。

兎にも角にも、さっちゃんに引かれた可能性が高いという事実だけが俺の後悔を招いていた。

泣いてしまうとはなんたる不覚。

そんなに悲しかったのか?

まあそうだろうな。

俺は、それだけ佐々木 美優のことを愛しているんだからー。

「顔、上げなよ。」

黙ってもっと俯いた。

「ねえ、上げてよ。」

返事はしなかった。

「ごめんってば。上げて?ね?」

さっちゃんが何に対して謝っているのかわからず、ただ俺は頭の中をハテナマークでいっぱいにさせた。

「実は……彼氏って…嘘なんだっ!!」

そう聞こえた瞬間、俺は勢いよく顔を上げ、目をまん丸にさせた。

「私、お願いがあるんだ。まあ、谷村は怒っちゃったり、呆れちゃったりするかもしれないけど…」

その次が早く聞きたかった。

そんな気持ちと、妙な間が何故か俺を焦らせた。

「何?!何だよ!」

待ちきれなくなってついに言ってしまった。

さっちゃんの肩を揺さぶりながら。

「…っ私!谷村のこと…他の男子よりも何倍も何倍も大事に想ってるんだ。だからね、もっとそばにいたい。これが私のお願い。あなたのそばに居させて。」

その言葉を聞いた時のこと、あまりよく覚えていない。

ただ単に、すごく嬉しかったのだけは覚えている。

その後、俺がなんて返したかなんて恥ずかしくて言えるはずがない。

これまで想っていたことを熱烈に伝えたのだから。

美優は、笑って聞いてくれた。

本来は俺から告白しなきゃいけないんだろうな…と悔やみつつも、一応あいつには、美優と恋人になれたことを伝えに行こうと思う。



「え?!ほんとに!?よかったじゃねーか谷村!」

「おう!まあ、お前のおかげってのもあるからな!」

あるのか?

まあ、あるということにしよう。

あの時、富士崎の裏をちゃんと教えてくれて、美優とのことを相談できた唯一の相手。

こいつは生涯の友としたい。

なあ?海崎?


ー幸せ気分に浸って、今日という最高の日は足早に過ぎ去った。








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