
大切な人へ
第27章 あなたと離れて
試験前の放課後でバイトも休み
いつものように残って2人で勉強会
彼は本当に頑張ってて成績は順調だった
今回なんて数学の範囲はほぼ完璧!
『すごい!全問正解!』
「やったー!お前のお陰!サンキュ」
『井川くんが頑張ったんだよ』
笑顔の彼とのこんな時間が好きだった
ふふって1人で笑っちゃう
「何?」
『いつもこの時間楽しいなって思って。』
「俺も。でもこんなに近くにいると…
やっぱキスしたくなるけどね」
すっと動く気配がして顔をあげると
彼は近くて顔を近づけてた…
私はそれをぼんやり見てた
そうなることを望むように…
「…いいの?」
あと数センチでも動かない私に
少しだけ離れて聞いた
『うん 私…井川くんのそばにいたい』
本当の気持ちだった
不思議とドキドキしなくて穏やかだった
ぶつかった視線の先の彼の瞳が少し揺れてた
ゆっくり ゆっくり近づいて
顔が重なって唇が触れる寸前に彼の瞳が閉じた…
ふわって唇を包む様な優しいキス…
あったかい…
心が満たされる様な
彼の気持ちのこもったキスだった
唇が離れていって また視線が絡む
「やばい…すげー嬉しい」
視線を下げてそう言って笑う彼…
嬉しそうなその表情が嬉しくて
私もだよって言った
