
大切な人へ
第28章 波乱の体育祭
どうしても聞きたくて
足音を消して耳に集中する...
「_____」
「_____‼」
井川くんが怒ってる...
先生は落ち着いた声で話してる
風の音や雑音で全部は聞こえなかったけど
はっきり聞こえたこともある
「もう俺は忘れた」
「幸せにしてあげて」
私は涙が止まらなかった
廊下に入ってうずくまって
彼らがいなくなるのを待った
「お前に言われなくてもそのつもり」
私は2人のどちらの言葉に泣いてるんだろう
きっとどちらもだ...
「美優どこいってたの?」
『ごめんね!ご飯食べて急に走ったからかな?
お腹痛くてちょっと休んでた』
リレーには間に合って2人の勇姿は見ることができた
去年よりもぶっちぎりで
1位でゴールテープを切った井川くんは笑ってた
今年も優勝したのは2組だった
今年の打ち上げは参加したくてバイトは休めて
4人でジュースで乾杯!
『2人とも今年も活躍したね!かっこよかった!』
「俺はともかく井川足速すぎ。今どれくらい?」
「5秒8くらい?上田もそんなかわんないだろ?」
「俺はぎり5秒台出したことないよ」
何この会話...
雲の上の人達が話しているわ
「速いよね!女子はだいたい8秒台だし」
8秒...紗羅もそれくらいだっけ?
「で?美優は?俺の倍くらいかかりそうだな」
井川くんが意地悪な顔で言ってるけど
『うん...それくらいかな』
マジで!?って笑われる...
実際9秒台なんて出したことないもん
「俺が抱えて走った方が速いんじゃね?」
そうかもしれないね 笑
彼の言葉で今日の先生を思い出す...
先生は遅い私とペースを落として走ってくれた
あれが井川くんなら抱えて走ってたかもって思う
本当に真逆だね
2人って
