
大切な人へ
第30章 夏への日常
「断んの?美優歌うの好きだろ。最後だしやれば?」
井川くんの低い声に一瞬静かになった
「あ!井川先輩ですか?
同じクラスだったんですね‼」
『井川くん知ってるの?』
「有名人ですよ!野球部のエース!」
...... 。
へーって言ってる私に
今更感たっぷりでみんなの視線がささる
『とにかく...ちょっと考えさせてもらえないかな
他のメンバーは私でいいって言ってるの?』
「はい!でも1回歌聞きたいって言ってます」
とりあえず連絡先を交換して保留にしてもらった
「美優...井川くんピッチャーなの知ってるでしょ?」
『知ってるよ?でも有名人って聞いて
ちょっとびっくりした。 そうなんだ?』
井川くんは知らないって言ってるけど
ちょっと拗ねてる? 笑
美咲ちゃんとは仲良かったしわざわざ来てくれたし
後日バンドの練習場所に行ってみることにした
って言っても音楽室の近くにある防音室だけど
初めて入ったそこは結構広くて
バンドの楽器がもう用意されていた
メンバーは2年生4人で男女半分ずつ
2年の頃の私たちみたいで可愛かった
『初めまして 藍野です。
元々ボーカルはいなかったの?』
ギター担当の男の子がボーカルを兼任していたけど
去年の予選会で落選したから新しく迎えようという
話しになったらしい でもどうして私?
「先輩去年美女コン出てたでしょ?
みんなに歌うまいんだよって言ったら誘いたいって!」
美咲ちゃんが推薦したのね...
私の好きだった曲練習したから1回歌ってほしいって
言われて 練習してくれたのに断れなくて歌った
歌いだすと楽しくって...
そのまま参加が決定してしまいました
