
大切な人へ
第30章 夏への日常
明日は6月30日
去年は知らなかったんだ
先生の誕生日...
私の誕生日にお祝いしてくれた時に知って
来年は私がお祝いするねって言ってたね
でも叶わなかったね...
お祝いしたかったよ
何もできなくてもおめでとうくらい言いたいな
だめですか?先生...
少し前偶然車から出てきた先生に会って
でも先生は何も言わず俯いて行ってしまった
普通ならあいさつくらいすると思うんだ
私たちはもう教師と生徒じゃなくて
他人になってしまったの?
「もう俺は忘れた」
体育祭で聞いてしまった先生の言葉
でもその直前には一緒にトラックを走ってた
先生の借り物は何だったの?
聞きそびれちゃったんだ...
私ね?好きな人...できた
他の人なんて嫌だって泣いた事もあったよね
でも井川くんのことは好きなの
でも...
まだ先生のことも好きなの...
井川くんは気付いてるかもしれないけど
それでも私のそばにいてくれるんだ...
だから大事にしたいって思ってるの
私を井川くんでいっぱいにできる日はくるのかな...
今日先生を見かけました
私文化祭で歌うかもしれないんだよ
防音室に行く途中
科学室の前にいたあなたは少し咳をしてた
声は聞いてないけど風邪ですか?心配です
風邪ひかないって言ってたあなたが
咳をしてるの初めて見ました
だからこれくらいは許してほしい
happy birthday for you
お大事に
メッセージカードにそう書いて
のど飴と風邪薬を
当日の朝早く
車にそっとかけておいた
