
大切な人へ
第31章 鈴木晄人
誕生日の朝 車の助手席側のミラーに紙袋を見つけた
中にあったカードを見てすぐにわかったよ
君の字だって。風邪薬とのど飴
俺が風邪だってどうして知ってるの?
最近見てないと思ってたのに
覚えてくれていたんだね。誕生日のこと
私がお祝いするねって言ってくれてたね
「ありがとう」
彼女の部屋に向かって小さく呟いた
まだ俺のこと想ってくれてるの?
気持ちも言わず君の前からいなくなったのに...
お別れって言ったのにはっきり別れを告げられなかった
でも今は井川が近くにいてくれてるんでしょ?
よかったね
井川は本当に君のこと想ってくれてるよ
~お別れに行った数日後~
「先生ちょっといい?話がある」 井川がきた。
『...ここでできない話し?』
「あんたにとっては聞かれたくない話しだと思うよ?」
君のことだってわかった。科学室で話した
「週末藍野と話した。最近のあいつ見てられなかった」
「あんたが相手だって薄々気付いてたよ
藍野から聞いたんじゃない。あいつは言わないだろ」
『...わかってるよ』
「うまくいってんならいいって思ってた。去年も
落ちてる日はあったけど...あいつ幸せそうだったから」
「でも別れたって聞いた...
振るなら振るできっちり言えよ!中途半端で
あいつどうしていいかわからなくて悩んでた。
もう気持ちないくらい言ってやれよ...うそでもさ」
「そんな顔するくらいなら別れるなよ...
あんた今 あいつと同じ顔してる」
