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大切な人へ

第33章 彼の夏


「美優ちゃん!」

井川くんを待って通用口の前にいると
先に現れたのは翔ちゃんだった

『お疲れさま翔ちゃん』
「ありがとう!…でも負けちゃった」
『うん…でも翔ちゃんよく打ってた』

彼はすごく汗だくでタオルで顔を拭いてた
帽子も被っててあんまり顔も見えない…



「美優…?日野と知り合い?」

井川くんも出てきて私たちに気付いた

『お疲れさま井川くん
そうなの。小学校が同じだったんだ』



井川くんにはちょっと悪いけど…


「井川くんごめん!
少し日野くんと話がしたいんだけど…
待っててもらえないかな…?」

普段なら怒ると思う…
でも怒られてもいいって思った


「…あぁ。じゃあっちのベンチにいるから」

少し間をあけてそう言ってくれた



美優ちゃんよかったの?って翔ちゃんは心配してた
大丈夫だよ!わかってくれるはず

名前で呼ばれてるの気付いたよね?


『井川くんと付き合うことになった』

翔ちゃんはそっかって小さく言って
おめでとうって笑ってくれた
でも今はそんなことはいい!


『翔ちゃん…甲子園に行くのが夢だったもんね
前もホームラン打ってたし
頑張って練習したんだね すごいね』

「…俺あんまり上手くなかったから
小学校の時は 美優ちゃんにしか言わなかった
覚えててくれたんだね」

『うん。あの頃から練習終わってからも
ずっと素振りとかしてたもん。
頑張りやさんだよ…翔ちゃんは』


俯くと全く顔が見えない…

タオルで口元を押さえたままの翔ちゃんの
高い所にある頭を撫でた


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