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大切な人へ

第33章 彼の夏


これで甲子園の出場校が決まる
どちらが勝ってもおかしくない試合らしい

観客も多くて盛り上がってた
私はずっと胸の前で手を握ってた_______


ずっと1人で投げ続けた彼の夏が





終わった_______



最後に見方のエラーで点数が加算され

2ー3

我が校は負けた

エラーをした選手が泣いてる…
彼がそれを慰める様子を席から見ていた






『井川くんはまだ中にいますか?』

会場の出入り口でうちの学校の選手に声をかける
探して来ようかって言ってくれたけど待つって言った

必ずここを通るから
多分私が待ってることはわかってるだろうから




蝉の鳴き声を聞きながら彼を思う

大丈夫だよ 待ってるから…



彼が見えた

1人で荷物を持って歩いてきた



『お疲れさまでした』

「…サンキュ 待たせてごめん」


私は笑顔で迎えた
彼は穏やかだった

黙って彼の手を握り歩く その手はすごく熱かった
彼が何も言わないから私も黙って歩く


「シャワー浴びたい」
『うちに来る?』
「いや…家で入ろうかな」

電車を降りて自転車で走り出す

部屋で待っててもいい?って聞いたら
小さくうんって言ってくれた


両親は今日お仕事らしい

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