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大切な人へ

第34章 ごめんね


一応受験生の私たちですが補習を受けるのは
教科も参加も本人の自由ということで
毎日行われていたけど 私はほぼ参加しなかった

志望大学の対策をしたかったから

主に受けていたのは小論文と強化したい物理と科学
でも先生に会わないように担当の先生はチェックしてた

なのに...


「今日は__先生が体調不良により
代行します鈴木です。よろしく」

無表情バージョンの先生の登場に固まった...


しかも今日はそこそこ少人数で
休憩をはさんで2時間あります...

さすがにここで帰るなんて言えません
こんな時に限って2列目に座ってる私...前もいない


地獄だ...




でも集中しないなんて失礼だ
先生を視線に入れなければいい

でも...

彼が動く度に先生の匂いがする
黒板の文字も懐かしい声も
1つ1つに泣きそうになる

しかも今日は8月1日
先生と花火を見たあの日なんだ

神様は意地悪だ



悲しいだけならいいの

でも嬉しい私もいるの


それをまた実感してしまうのがつらいの...

今日は井川くんはいない

だから余計に罪悪感が増す


早く終って...



でも後半は少し落ち着いて集中できた

改めて思う...先生の授業は解りやすい

教科書にはない独自の解説はすごく参考にもなって

別にメモを取ってた

熱心な彼は代行なのによく用意してくれていたのだ


あ...

『あの...そこ___が___になってます』

珍しく彼が計算式のミスをしていた
彼はすぐ消して書き直す

「失礼。ありがとう」
『...いえ』

....... 。

やっぱりだめだ


目が合った一瞬の微笑みが
彼と離れていた時間を一気に巻き戻した


好きだよ...どうしても


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