
大切な人へ
第39章 気付けなかった
『どうしてそんな顔するの...?』
あなたの心の中を見る特別な目は 私にはないみたい
「まだ好き? 晄人さんのこと」
その名前を聞いたとき
頭が真っ白になった...
また彼にその名前を言わせるなんて...
彼は文化祭の写真を撮ったのが先生だと知っていた
写真を見たときにすぐそう思ったそうだ...
実行委員の人にもその後聞いたらしい
「美優が俺を好きになってくれたのもわかってる
俺のことも家族も大事にしてくれるし伝わってる」
横に座る彼は前を見たまま話してる
「でもあの写真見て そう思った
まだ晄人さんのことも好きなんだろうな...って」
「それでもいいって俺が言ったのにな...
だから美優責めたりするつもりもない。ごめん」
嘘なんて言っちゃいけない
飾った言葉なんて彼をもっと傷つける
『井川くんのこと、好きになって
その後もどんどん好きになっていった
幸せだなってよく思ってるし
これからもそばにいさせてほしいって思う』
『でもね...なかなか消えてくれないの』
『どうしたら過去になるんだろ...』
過去にしたい...
今は私もそう願ってる
