
大切な人へ
第40章 母の愛
冬休みに私は母に会いに行った
外で会おうと言った私に 母は家においでと言った
久しぶりの実家は何も変わっていなかった
小さな庭にいくつか生えている樹木は
父が昔世話していた
その後は私が世話をしていたから
今はもうないと思ってた...
母は再婚相手の隆之さんと共に出迎えてくれた
隆之さんはあいさつだけして奥の部屋に行った
母とこうしてリビングのソファーに座ったのは
何年ぶりだろうか...おそらく最後は小学生の頃
この広い部屋にある大きなグランドピアノは
昔と同じ場所に置かれていた
紅茶を入れてくれた母は
昔と変わらない美しく長い髪のままで
ほんの少しだけ歳をとった気がする でも綺麗だ
『今日はお仕事なかったの?』
「うん。早くに言ってくれたから大丈夫よ」
多忙な母が1日何もなかったなんて思えなかった
だから休みの前から連絡して この日も母に合わせた
『ごめんね...ずっと連絡しなくて』
「...うぅん。美優はしっかりしてるから」
ふっと笑って紅茶に口をつけた
母は所作も美しい人 品があって完璧なんだ...昔から
『今の担任の先生から聞いた。全部...教えてくれたの』
「...そうだと思ったわ」
そう言った途端
母はポロポロと涙をこぼし
何度も私に謝った
ただひたすらごめんなさいって...
