
大切な人へ
第41章 磁石
私は悩んでいた...
それは鈴木先生になんて言えばいいか
なんて言えば伝わるの?
この感謝と謝罪の気持ち
とても言葉で言える気がしないこの想い
それに先生は知ってたんだね...
長い髪の理由と意味を
だからあんなに何度も謝ってたんだね
でもあの時も今も後悔なんてしてないの
だって先生は私のお母さんまで助けてくれてた
私をあの家に導いてくれた...
髪よりもたくさんの思い出に触れさせてくれた
ねぇ...どうして黙ってたの?
私がお母さんを好きだって知ってたでしょ?
じゃぁ言ってくれればよかったじゃない...
先生にたくさん質問があるの...
教えてもらえませんか?
3学期の始業式とHRが終わって中庭で
1人ベンチから科学室の窓を見上げる
1月の寒い中庭に他に人なんて来ない
私は彼を想い泣いていた...
かけてはいけない天秤を目の前に
私はずっと迷ってる
私の気持ちを教えてほしい
あなたの気持ちを...教えてほしい
ねぇ...先生
どれくらいこうしていたかな...
涙に濡れた頬も
鼻も耳も指先も
すごく冷たい
そしたら私の見ていた窓が開いたの...
そこにはその人がいた...
私のスマホが振動する
画面に触れて耳にあてた
「どうしたの?また泣いてるの?」
優しいあの人の声だ...
窓から見下ろす彼もまたスマホを耳にあてていた
「...寒いでしょ?こっちにおいで」
