
大切な人へ
第1章 はじまり
はっきり言って 私は科学が嫌いだった
というか苦手だった
でも今は この科学室にくるだけで
テンションがあがってしまう
先生と2人きりになれる場所だから__
『ここなんですけど…』
持ってきたノートを指先して2人で覗く
彼のサラサラの前髪 薄い唇
「そこはね、この__ 」
彼の声 ふわっと香る匂い
集中出来ず 聞き流してしまいそう
でもちゃんとしなくちゃ!
時間を作ってくれてるんだからと
気をとりなおして突っ込んだ質問をして
解決していく
彼はいつも問題集を持ってきてくれていて
質問したものの関連問題を出してくれる
そんな真面目で優しい所も好き…
「正解!」
喜んでくれる様なその声が嬉しくて
顔をあげる
「よくできました!」
ポンっと頭を撫でられ優しい笑顔を向けられる
…⁉
こうやって教えてもらうのは
もう何度目かになるけど
こんな事は初めてで…
私はフリーズしてしまった。
「あっ…ごめんっ 」
そう言って少し気まずそうに手を引いてしまう
あっ…嫌がってる様に見えた!?
『あ…アリガトゴザイマス 』
とっさに出た言葉はカタコトで恥ずかしい…
少し沈黙が流れてしまった
